【分析してみた】VTI vs VOO 投資に最適なのはどっち?【1988年4月-2021年1月】

どうもTatsuoです。

米国株に投資する際、VOO (S&P 500) に投資するか、VTI (全米株式) に投資するかで迷っている方は多いと思います。

今回は、VOOとVTIの2001年7月から2021年1月までの実際の値動きをもとに、一括投資・期間分散投資をした場合の期待リターン、リスク、投資効率を分析してみました。

Tatsuo

少し長いですが、どうぞお付き合いください!

目的

手元にある余剰資金を、ある月に一括投資する場合と、5年間に分けて毎月分散投資する場合の2条件に分けて、VTIとVOOの投資効率・リターン・リスクの比較をすることを目的としました。

使用するデータ

データソース

使用データとトータルリターンインデックス

  • VOO:今回、VOOの株価情報ではなく、S&P 500 (TR) のデータを使用しました。
  • VTI:トータルリターンインデックスの情報がないため、権利落ち月に配当を再投資したとして、仮想のトータルリターンインデックスを作成しました。
S&P 500 (TR) とは、S&P 500に投資して得られるキャピタルゲインに加え、得られた配当(インカムゲイン)を再投資した場合のトータルリターン(キャピタルゲイン+インカムゲイン)を示す指標です。

分析対象期間

2001年7月1日から2021年1月1日まで
* VTIの株価情報について、入手可能な最も古い年月が2007年7月1日のため

投資シミュレーション

上記のデータを用い、投資シミュレーションを行いました。

投資期間

投資期間は以下の2条件を想定しました。

  • 最初に投資した月から10年間保有条件
  • 2021年1月まで保有条件

為替について

本分析では、為替変動が投資に及ぼす影響についても考察するため、一括投資、分散投資それぞれについて、投資資金が米国ドルであった場合と、日本円であった場合の結果を算出しました。

一括投資

2001年7月1日から2011年2月1日の期間において、毎月月初に一括投資を行い、10年間もしくは2021年1月まで保有した場合の最終時価残高を1カ月ごとに算出しました。

5年分散投資

2001年7月1日から2011年2月1日の期間において、それぞれ5年間、毎月資金の60分の1ずつを均等に投入し、10年間もしくは2021年1月まで保有した場合の最終時価残高を算出しました。

【例:投資期間10年間の場合】
2001年7月1日から2001年6月1日まで、5年間、毎月資金の60分の1ずつを均等に投入→2011年7月1日時点の最終時価残高を算出
2001年8月1日から2001年7月1日まで(以下同上)→2011年8月1日(以下同上)

2011年2月1日から2016年1月1日まで(以下同上)→2021年1月1日(以下同上)

5年分散投資の場合、10年間保有条件では、5年目に投資した資金の運用期間は5年となります。

分析

上記シミュレーションの運用結果に基づき、以下の3点を計算しました。

  • リターン(CAGR; 年平均成長率)
  • リターンの標準偏差
  • 投資効率

標準偏差はリスクを表し、投資効率はリターン÷リスクで計算することとします。

なお、標準偏差については、リターンが正規分布に従うと仮定して計算しています。

為替および物価変動補正

過去の物価変動を、以下のように調整しました。

  • IMFのUS CPIを使用し、S&P 500 (TR)・VTIの過年度月初終値を、2021年1月現在の米国物価ベースの終値に補正
  • 日本円を使用した場合は、さらにIMFのJP CPIを使用し、2021年1月現在の日本物価ベースの終値に補正したのち、Investing.comのUSD-JPY為替を使用し、日本円の終値を算出

結果と考察

シミュレーション結果

まず、シミュレーション結果は以下のとおりです。

VTI

表中、赤枠で囲った行は、VOOの期待値との差を示したものです (VTI-VOO)

VOO

VTI&VOO投資期間10年CAGR分布

結果1. 投資対象での比較

投資期間10年間条件、10年以上条件、いずれの条件においても、リターンおよび投資効率ともに、VTIがVOOを上回った

VTIのリターンがVOOを上回った要因としては、VTIの構成銘柄に、S&P 500には採用されていないものの、急成長を遂げ、時価総額が大幅に上昇した企業が含まれるからだと考えます。

また、投資効率については、VOOよりもVTIの方が構成銘柄数が多いことから、分散が効いたためでしょう。

この結果だけを見れば、VTIの方がVOOよりも投資対象としては魅力的なように思えます。

結果2-1. 投資方略での比較その1

投資期間10年間条件、10年以上条件、いずれの条件においても、米国ドル建てのリターンは、VTI、VOOともに一括投資が期間分散投資を上回った

以前の記事でも記載しましたが、一括投資の方が市場に資金を長く投じることができること、そして、原通貨の投資には為替差損が生じないことから、期間分散投資に比べ一括投資でのリターンが高くなったものと思われます。

一括投資か期間分散投資、どちらがいいのかというテーマで、S&P 500を対象に分析を行なった記事です。
お時間がある方はこちらもぜひどうぞ!
【分析してみた】S&P 500、最適なのは一括投資?期間分散投資?【1988年4月-2021年1月】

結果2-2. 投資方略での比較その2

投資期間10年間条件および10年以上条件ともに、日本円建てのリターンは、VTI、VOOともに期間分散投資が一括投資を (わずかに) 上回った

結果2−1と異なり、日本円建てで投資を行なった場合には、わずかですが、期間分散投資が一括投資をリターンで上回りました。

この結果は、外貨 (日本円) での投資の場合には、資金投入のタイミングを分散させることが為替リスクの抑制につながることを示していると思われます。

また、一括投資と期間分散投資のリターンの差に着目してみると、日本円で投資を行なった場合の差は、原通貨 (米ドル) での投資で生じるほど大きくは開きません。

本来投資方略で生じるはずのリターンの差 (一括投資>期間分散投資) が、外貨建てになると、為替差によって均されているといえるでしょう。

本結果だけを以て、外貨建てでの投資ならば必ず期間分散投資の方がリターンが高くなる!とは言い切れないですが、少なくとも、為替変動によって、原通貨での投資の場合よりも、投資方略によるリターンの差は生じにくいと考えます。

結果3. 投資期間

一括投資、期間分散投資いずれの場合も、VTI、VOOともに、投資期間10年条件よりも投資期間10年以上条件のリターンが高くなった

また、投資期間が10年以上の場合、投資通貨に限らず損失発生確率が0%であった。

本結果から、投資方略、投資通貨にかかわらず、市場に資金を長く投じることの重要性が示されたと考えます。

VTI、VOOの過年度推移は、長期的にみれば右肩上がりです。

今後も右肩上がりのトレンドを期待するのであれば、長期で市場に資金を投じることが最も重要であるといえるでしょう。

総合考察

  • VTI(全米株式)とVOO(S&P 500)を比較した場合、VTIの方がリターンの最大化、および投資効率という観点から好ましいだろう。
  • VTI・VOOいずれに投資する場合も、米国ドルで投資するならば、リターンの最大化という観点から、一括投資が良いだろう。
  • VTI・VOOに日本円で投資する場合、投資効率の観点から、期間分散投資を選択すると良いだろう。
  • 投資期間を長期でとることは、リターンを向上させるだけでなく、価格変動・為替変動リスクを抑制することにもなるといえる。

まとめ

さて、本記事ではVTI・VOOの実際の過去のデータを用いて、様々な角度から検討してきました。

結局のところ、投じる通貨や投資方略 (一括投資か期間分散投資) の差よりも、いかに長期的に保有し続けるかが、リターンの極大化につながる重要な要因であることが分かりました。

これらのデータについて、「これはどうなの?」、「この指標でも分析して欲しい!」等、ご意見・ご感想がございましたら、お気軽にお問合せください。