【生命保険と資産運用】”貯蓄型”生命保険を買ってはいけない理由

どうも、Tatsuoです。
世の中には様々な保険商品があふれており、その中から自分のライフプランにあった保険を選ぶのはとても難しいですよね。
特に、資産運用機能の付いた、いわゆる貯蓄型の生命保険商品については、保険会社に勤める者として頭が痛くなるような商品ばかりです。

【資産管理】我が家の基本方針でも書いていますが、保険は資産運用と分けて考えるべきであり、保険でお金を増やそうとしてはいけないと考えています。

本記事では、なぜ保険で資産運用をしてはいけないのか、貯蓄型の生命保険の何がいけないのか、その理由について解説していきます。

その”貯蓄型”生命保険、本当にお得ですか?

結婚や出産、退職など、人生の契機に家計設計を見直す際、加入する保険を見直す方は多いですよね。

その際、資産運用機能が付いた貯蓄型の生命保険商品(学資保険、積立終身保険、外貨建積立終身保険など)に魅力を感じる方は多いでしょうし、銀行の窓口やファイナンシャルプランナーに相談すると、そういった商品を勧められる機会も多いと思います。

保険業界に身を置くものとして声を大にして言いたいのですが、そういった、資産運用機能の付いた貯蓄型生命保険は本当にお勧めしません。

なぜなら、保険商品で資産運用ができてお得!なんてことは決してないからです。

パンフレットを見るだけだと一見お得そうなのに、なぜ?と思われる方も多いと思いますので、その理由を解説します。

Tatsuo

ただし節税の観点から、生命保険料控除の範囲内で個人年金保険に加入するのは良いと思います。これは後ほど説明します!

資産運用機能の付いた貯蓄型生命保険を買ってはいけない理由

資産運用機能の付いた貯蓄型生命保険を買ってはいけない理由は、主に以下の4つのポイントにまとめられます。

  1. 保険料のうち、いくらが資産運用分に充当されるか不明確
  2. 資産運用コストが不明確
  3. 生命保険金の受給で所得税率が上昇する可能性がある
  4. 株式投資対比で高い所得税が課される可能性がある

1. 保険料のうち、いくらが資産運用分に充当されるか不明確

まず、最も懸念すべき点は、支払う保険料のうち、いくらが保険の保障に充てられる保険料で、いくらが資産運用に充当される保険料なのかが不明確である点です。

利回り保証について、保険会社のパンフレットには小さーーい文字で以下のように記載されています。

“積立利率は、主契約の積立金(将来の保険金をお支払いするために、保険料の中から積み立てる部分)に付利されるものであり、保険料全体に付利されるものではありません。特約部分には積立利率は適用されません。”

これだけを見ても、保険商品になじみのない人にとっては「主契約」だの「積立金」だの、使われている用語がよくが分かりませんよね。

主契約とは、加入する生命保険の基本となる契約条件のことです。
例えば積立終身保険であれば、リスク移転機能の終身保険の機能と、資産運用機能の積立機能の二つの機能があり、それらをまとめて主契約といいます。

主契約に対して、特約というものもあります。
特約とは、「三大疾病保障特約」のように、主契約の保障内容だけでは物足りない!という人が上乗せして加入することができるオプションのことです。オプションなので、オプションだけに加入する、ということはできません。

ここで上述の保険会社の一文に話をもどすと、「積立利率は主契約の積立金に付利される」とあります。
これはつまり、保険料のうち、主契約の資産運用機能について払う保険料部分についてだけ利率が付く。ということです。

しかしながら、通常、主契約に対して支払う保険料のうち、いくらがリスク移転機能部分の保険料で、いくらが資産運用機能部分の保険料か内訳は開示されていません

これは、資産運用において非常に憂慮すべき事です。
なぜなら、資産運用で最も重視すべきは、投資するお金に対してリターンがいくらか、という点だからです。

そもそも投資に回される金額が不明だと、例え利率が保証されていても、リターンがいくらになるか計算できないですよね。

従って、そのような投資するお金がいくらか不明瞭なものに、お金を投じるべきではないと言えるでしょう。

2. 資産運用コストが不明確

資産運用機能がついた貯蓄型生命保険に加入するということは、保険会社に資産運用をお任せするということです。

そうなると当然、保険会社には資産運用を行うにあたり、コストが発生します。
そしてそのコストは、保険料から差し引かれます。

保険会社のパンフレットにはこれまた小さーーい文字で以下のように記載されています。

“積立利率は毎月1日に設定されます。毎月の積立利率は、その前々月のこの保険の資産の運用実績から運営費率、保証費率、その他費用を差し引いた利率が適用されます。”

運営費率や保証費率が資産運用のコストにあたります。パンフレットには、これらのコストが発生することは記載されていますが、それがいったいいくらなのかは記載されていません

これがもし投資信託などであれば、いくらの運営費がかかるかなどが開示されています。
そうでないと利回りを計算することができないからです。

ところが、貯蓄型生命保険ではその部分が開示されません。
つまり、投資するお金がいくらかも分からなければ、そのうちいくらが運営費などの経費として差し引かれるかも分からないのです。

3. 生命保険金の受給で所得税率が上昇する可能性がある

これは資産運用機能の有無に限らず、生命保険金が発生するすべての保険に言えるのですが、生命保険金を一時金で受給すると一時所得として、年金で受給すると雑所得として、両者とも総合課税の対象となります。

所得税率は累進課税制度のため、課税総所得金額が上昇すると、税率が上昇します。

従って、生命保険金受給のタイミングで、給与所得など総合課税の対象となる所得が他にある方は、生命保険金受給で所得税率が上昇する可能性がある点に注意が必要です。

4. 株式投資対比で高い所得税が課される可能性がある

所得税は累進課税制度をとっており、年間課税所得が330万円を超過すると、所得税率は20%(現在は復興特別所得税2.1%が追加されるため、20.42%)から段階的に上がっていきます。

3.で生命保険金の受給により所得税率が上昇する可能性について述べましたが、もし生命保険金を受け取ることにより課税総所得金額が330万円を超過した場合、所得税として20%以上を支払う必要が出てきます。

一方、株式の売買の所得(譲渡所得)と配当所得は分離課税にあたります。

株式投資を「源泉徴収ありの特定口座」で行えば、その所得金額に関わらず、所得税率15%(現在は復興特別所得税2.1%が追加されるため、15.315%)が源泉徴収されます。
株式投資によって得た所得はこのように分離課税の対象となるため、課税総所得金額に含めなくて済むのです。

つまり、保険金の受け取りによって課税総所得が330万円を超過してしまうと、わざわざ保険会社に頼んで運用してもらって得たお金に対して、株式投資対比で高い所得税(20%以上)を支払うことになってしまうのです。

そうなると当然、仮に株式と生命保険の利回りが同じであった場合、税引き後のリターンは株式のほうが上回ることになります。
その点からも、資産運用は保険と分けるべきであると言えます。

例外:生命保険料控除の範囲内で個人年金保険に加入する

つらつらと資産運用機能の付いた貯蓄型生命保険を買うべきではない理由を書いてきましたが、買い方を間違わなければ買っておいても良いと考えられる保険商品もあります。
それは、個人年金保険です。

日本には生命保険料控除という制度があり、個人年金保険の場合「個人年金保険料税制適格特約」を付加した保険に加入すれば、総所得金額から年間最大で所得税は4万円、住民税は2.8万円を控除することができます。

これは、所得税率が20%の方なら、年間で所得税が8千円、住民税(課税総所得金額に関わらず一律10%)が2.8千円安くなる計算です。所得税率がもっと高い方だと、より節税できます。

このような節税の観点から、生命保険料控除の額が最大となる、支払保険料年間8万円(=月額6,666円)までならば、個人年金保険に加入しても良いといえるでしょう。

Tatsuo

ただし、住宅ローン控除等でそもそもの所得税が0の方は、その恩恵は受けられませんのでご注意を!

まとめ:そもそも保険に加入する目的とは?

ここまで、資産運用機能の付いた貯蓄型生命保険に加入すべきではない理由、入っても良い個人年金保険の条件について解説してきましたが、
ここで、そもそも保険に加入する目的について考えてみたいと思います。

保険の本質は、リスクの移転です。

死亡保険ならば、自分が死んでしまった時に残された家族が生活に困るリスクを保険で移転することができます。
火災保険なら、自宅が火事にあったときの経済的損失を移転することができます。

資産運用機能は、そういった保険の本質的な役割とは別に、より多くのお金を保険会社が集めて利用するために付け加えられた機能にすぎません。

だからこそ、生命保険は、死亡保障のみなどリスク移転の機能だけに特化したものに加入するほうが無難であり、お金を増やしてもらおうと貯蓄型生命保険に加入すべきではないのです。

Tatsuo

自分たち家族の大切なお金をわざわざ保険会社に預けて運用してもらう必要はありません。資産運用は保険と分けて考えましょう!