【所得税Part1-4】申告分離課税【所得税の仕組みに詳しくなろう!】
- 2021.09.27
- 税金
どうもTatsuoです。
今回のパート1-4では、申告分離課税について解説します。
申告分離課税の対象は下図の通り複数ありますが、今回は上場株式等に係る譲渡所得・配当所得に焦点を当てて説明します。
申告分離課税は、資産運用に関する確定申告においてとても重要です!
そもそも分離課税って何?
パート1-1で触れましたが、所得税は各種の所得を合計して、税金を納める総合課税が原則です。
しかし、一部の所得については、分離課税という方式が採用されています。
分離課税とは、総合課税の対象となる所得とは分けて(分離して)課税する制度です。
分離課税の対象のうち、配当や国内銀行預金の利子のように、我々に支払われる時点で既に所得税を徴収、つまり源泉徴収されているものは、源泉分離課税として課税関係が終了しているので、申告する必要がありません。このことを、申告不要制度と呼びます。
一方、源泉徴収されていないものや源泉徴収されているけれども確定申告したいものは、分離課税として、必要に応じて申告する必要があるのです。
資産運用における分離課税の重要性
資産運用において、分離課税の内容を知っておくことは重要です。
なぜなら、賢く確定申告をすれば、税率が抑えられる可能性があるからです。
前回までの記事で解説したとおり、総合課税は累進課税制度をとっています。
他方、分離課税の対象となる所得には、それぞれの所得税率が適用されており、個別に所得税を計算することができます。
そして、資産運用において多くの人が手にするであろう株式等の配当については、そもそも源泉分離課税として課税されているものの、あとで確定申告を通じて、総合課税を選択することが可能です。
総合課税の対象となる所得が少ない(=税率が低い)場合、確定申告を行って総合課税を選択することで、税金の還付を受けることが可能です。
一方で、ある程度収入があり、総合課税の対象となる所得が多い(=税率が高い)人にとっては、株式等の配当に対して総合課税ではなく分離課税を選ぶ(申告不要制度を使う)ことが、節税になります。
分離課税の対象
分離課税の対象となる所得は、以下のように分けられます。
- 山林所得:山林の伐採または譲渡による所得
- 退職所得:一時金で受け取る退職金(年金形式で受け取る場合は雑所得)
- 土地建物等に係る譲渡所得:土地や建物を売却して得た所得
- 一般株式・上場株式等に係る譲渡所得等(公社債等債券も含む)
- 上場株式等に係る配当所得等:上場株式の配当や、公社債の利子
- 先物取引等に係る雑所得等:FXでの所得など
一般株式・上場株式等に係る譲渡所得等には、株式の売買や、債券の償還差益が該当します。
一般株式とは、上場株式以外、すなわち非上場株式のことです。
参照:「株式等」、「上場株式等」及び「一般株式等」の意義―国税庁
ちなみに、上場株式等に係る配当所得が分離課税の対象ですが、一般株式の配当は総合課税の対象です!
分離課税の対象となる所得の中でも、特に株式投資に関わるのは、一般株式・上場株式等に係る譲渡所得等と、上場株式等に係る配当所得等ですね。
ここからは、この2つに絞って解説します。
一般株式・上場株式等に係る譲渡所得
一般株式・上場株式等に係る譲渡所得は、
譲渡所得 = 譲渡価額(売却価格) – 取得費 – 譲渡のための委託費用(売却手数料)
で求められます。
100万円の株を購入(手数料1万円)し、120万円で売却(手数料1.2万円)した場合、
譲渡所得 = 売値120万円 – 取得費 101万円 – 売却手数料1.2万円 = 17.8万円
となります。
一般株式・上場株式等に係る譲渡所得の税率
現在、一般株式・上場株式等に係る譲渡所得の所得税率は、一律で15.315%(所得税15% + 復興所得税15%*2.1%)、住民税率は、一律で5%となっています。
つまり、どれだけ株式売買での譲渡所得(キャピタルゲイン)が高くても、一律で所得税・住民税合計で20.315%しか徴収されません。
株式売却益の多い人にとっては、総合課税と比べて税率を抑えることができる、お得な制度といえます。
上場株式等に係る配当所得
次に、上場株式等に係る配当所得ですが、こちらは、
配当所得 = 配当収入 – 株式等取得のための借入金利子
で求められます。
借金をしてまで配当のために株式を購入している人は少ないと思いますので、基本的には、配当所得が配当収入と等しくなると考えておけば大丈夫でしょう。
上場株式等に係る配当所得の税率
上場株式等に係る譲渡所得も、上記の譲渡所得と同様、所得税率は一律で15.315%(所得税15% + 復興所得税15%*2.1%)、住民税率は一律で5%です。
なお、一般株式(非上場株式)の場合、所得税20.42%(所得税20% + 復興所得税20%*2.1%)、住民税0%となっています。
これらの税率に比べて、総合課税の所得税率が低い場合には、確定申告を行って配当金に総合課税を適用させたほうが良いでしょう。
一方で、総合課税の所得税率が高い場合には、特に確定申告を行わず、分離課税を適用させておいたままのほうが賢明であるといえます。
まとめ
今回は申告分離課税ついて解説しました。
分離課税とは、総合課税の対象とならず、個別に定められた税率で納税するしくみであるということがお分かりいただけたでしょうか。
次の記事では、資産運用面で確定申告が必要になるケースについて解説したいと思います。
特定口座や一般口座など、証券口座の種類とその意味がわかるように書いていきます!
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