【扶養の種類】扶養制度と年収の壁について【103万/ 106万/ 130万の壁】
どうもTatsuoです。
結婚を期に正社員からパートになったり、専業主婦だった人が仕事を始めるときに頭を悩ませることが多いであろう、日本の「扶養」制度。
年収の壁がいくつもあって、煩雑に感じる人も多いのではないでしょうか。
実は、これらの年収の壁は、税法上の扶養と社会保険上の扶養、2種類の扶養制度に関係しています。
本記事では、それぞれの扶養の概要と、年収の壁の要件について解説します。
扶養の種類
冒頭でも触れましたが、扶養には、税法上の扶養と社会保険上(健康保険・国民年金)の扶養の2種類があります。
税法上の扶養
税法上の扶養は、所得税と住民税の計算に関係します。
主たる生計者(家計を主に支えている人)の税法上の被扶養者になれば、扶養者(主たる生計者)の所得に扶養控除が適用され、税金を抑えることができます。
また、税法上の扶養に入ると、本人の所得税を納付する義務も生じません(給与所得のみで年収100万円以内なら、住民税も生じません)。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養は、被扶養者の健康保険や国民年金に関係します。
日本に住所を有する人は、国民皆保険制度・国民皆年金制度(20歳以上)のため、何かしらの健康保険への加入と、国民年金保険料の納税が義務付けられています。
しかし、主たる生計者の社会保険上の被扶養者になれば、健康保険は、主たる生計者の勤め先が所属する健康保険組合もしくは共済組合に加入することができます。
また、国民年金については、第三号被保険者となり、本人は納税しなくて済みます。
この社会保険上の扶養は、主たる生計者が会社員もしくは公務員である場合にしか適用されません。
自営業者は、国民健康保険(国保)に加入しますが、国保には被扶養者という制度がないからです。
年収の壁について
扶養内で働くことを検討する際に出てくる、「103万円の壁」や、「106万円の壁」、「130万円の壁」という言葉。
ここからは、それらの年収の壁について解説します。
103万円の壁
「103万円の壁」は、
- 本人の所得税
- 主たる生計者の所得税(税法上の扶養)
- 1週間当たりの決まった労働時間が20時間以上(残業は含まない)
- 1カ月あたりの決まった賃金が8.8万円以上(通勤費や残業代は含めません)
- 雇用期間の見込みが1年以上(更新される場合がある旨が契約上記載されている場合を含む)
- 学生でないこと
- 従業員数が501人以上の会社で働いているもしくは、500人以下の会社だが社会保険加入について労使で合意がなされている
- 交通費や残業代等手当を含む、今後1年間の見込み年収が130万円未満(60歳以上:180万円)
- 主たる生計者の年収の2分の1未満(同居の場合)
- 主たる生計者の仕送り額未満(別居の場合)
- 扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。
- 「103万円の壁」は税法上の扶養と関係があり、所得ベースです(年収ベースではありません)。
- 「106万円の壁」は社会保険上の扶養と関係があり、あらかじめ決められた契約上の年収ベースです。
- 「130万円の壁」は社会保険上の扶養と関係があり、今後1年の年収ベースで判断されます。
に関係します。
1.本人の所得税について
所得税は、課税所得に所定の税率を適用して計算されます。
課税所得とは、収入から所得控除を差し引いた後の金額を指します。
給与所得者の場合、関係する控除は基礎控除と給与所得控除です。
基礎控除とは、納税者すべてに対して一律に無条件で適用される控除で、2021年2月現在の所得税制度では、控除額は48万円となっています。
給与所得控除は給与所得の必要経費に相当するもので、給与収入金額が162.5万円以下の場合、55万円となっています。
つまり、給与収入だけの場合、給与収入が103万円(=基礎控除48万円+給与所得控除55万円)以下であれば、課税所得は0円となるため、自分自身の所得税が生じないのです。
年収が103万円を超えると、課税所得に応じて所得税がかかってくるため、103万円の壁と呼ばれるわけです。
所得税について調べるときには、収入と所得という言葉に注意しましょう!所得とは、収入から各種所得控除や必要経費を差し引いた値のことです。
当然、給与所得以外に不動産所得などがある方は、それらも含めて所得税が計算されます。
例えば、不動産所得が48万円ある方であれば、給与収入が55万円以下でないと、課税所得は0円となりません。
参考:パートに関するQ&A ―国税庁 / 給与所得控除 ―国税庁
2. 主たる生計者の所得税(税法上の扶養)について
2021年2月現在の所得税制度では、配偶者の合計所得金額が48万円以下であれば、主たる生計者は、所得税の配偶者控除を受けることができます。
合計所得金額とは、
給与所得や一時所得といった総合課税の対象となる所得の合計(総所得金額)に、
上場株式等の配当所得(確定申告することを選択したもの)といった申告分離課税の対象となる所得を合計したものです。
所得が給与所得だけの方であれば、給与所得=合計所得金額となりますので、給与所得が48万円以下となれば、主たる生計者は所得税の配偶者控除を受けることができます。
給与所得は、給与収入-給与所得控除で計算されましたね。
給与所得控除は先ほど記載した通り、給与収入162.5万円以下の場合、55万円です。
給与収入103万円以下であれば、給与所得(給与収入-55万円)が48万円以下になります。
この場合、主たる生計者の所得税の配偶者控除の要件を満たすこととなります。
この値は、先に説明した、本人の所得での所得税発生要件と同じ値に設計されています。
参考:配偶者控除 ―国税庁
103万円の壁まとめ
以上の2つの理由が、103万円の壁と呼ばれる所以です。
なお、この103万円には、交通費は含めません。
給与所得では、通勤費は一定金額まで非課税(電車やバスのみの場合、1カ月上限15万円)とされているからです。
参考:通勤手当 ―国税庁
106万円の壁、130万円の壁
次は、「106万円の壁」と」「130万円の壁」です。
これらの年収の壁は、社会保険上の扶養に関係します。
年収要件を超えた場合には、社会保険上の扶養から外れ、働く本人が、社会保険(健康保険や年金、雇用保険など)に加入する必要が出てきます。
また、主たる生計者の勤務先に扶養手当がある場合には、この社会保険上の扶養を基準にしているケースが多いと思います。
扶養手当支給の要件がどうなっているかについての詳細は、主たる生計者の勤務先の規定を確認しましょう!
先に解説した103万円の壁は所得ベースでしたが、「106万円の壁」と「130万円の壁」は、年収ベースで考えます。
なお、「106万円の壁」の年収には、交通費は含みませんが、
「130万円の壁」の年収には交通費を含みますので注意しましょう。
協会けんぽではなく、○○会社健康保険組合などに加入している方も多いと思いますが、多くの健康保険組合が協会けんぽと似た制度をとっているためです。
106万円の壁
「106万円の壁」の判定は、月収ベースでなされます。
以下の5つの要件すべてに当てはまる場合、働く本人が社会保険に加入する必要があります。
これらの要件は、就労契約時に分かることなので、働き始めてから「106万円の壁」を気にするケースは稀だと思います。
130万円の壁
106万円の壁の適用要件に当てはまらなかった場合、次に基準となるのが「130万円の壁」です。
協会けんぽの被扶養者の要件は以下の通りとなっています。
別世帯の場合は要件が変わってきます。
年収130万円未満と記載されていますが、実際には月収10.8万円を超過しているか否かが判定材料となります。
この要件を満たさないと、社会保険上の扶養から外れてしまうため、被扶養者のままでいたい場合は注意が必要です。
また、130万円の壁の年収判断には、決まった賃金だけでなく、残業代や交通費が含まれます。
ここで焦点となるのは、今後1年間の見込み年収が130万円(月収が10.8万円)を超過するか否かという点です。
直近1年間の収入が毎月10.8万円以下で、年収130万円以下であったとしても、昇給などで今後は毎月10.8万円を超過する見込みの場合には、扶養の要件を満たしません。
勤務状況(毎月残業を定期的に行っている)や昇給などには注意が必要です。
ただし、急な繁忙でその月の月収が10.8万円を超過したとしても、即扶養から外れるわけではありません。
健康保険組合が、何を以て年収の見通しを立てているかは明言されていませんが、厚生労働省の通達を見るに、直近3カ月の月収から計算される年収が一つのポイントとなっていそうです。
参考:被扶養者とは ―協会けんぽ / 扶養確認に関する通達 ―厚生労働省
まとめ
本記事では、扶養の種類について解説しました。
要点をまとめると以下のようになります。
扶養内で働きたいと考えたときに頭を悩ませるであろう年収の壁。この記事が参考になれば幸いです。
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