【海外駐在者必見】税金・健康保険・扶養について【海外赴任と日本の制度】
- 2021.02.23
- 税金
どうもTatsuoです。
本記事では、海外赴任に伴って疑問となりやすい、日本国内での税金や、健康保険、扶養、年金について解説します。
所得税
まずは所得税から。
所得税法では、納税義務者(個人)を、居住者と非居住者に分けて、課税範囲に違いを設けています。
居住者・非居住者の判定は、住民票の有無ではなく、住所の推定に基づいて行われます。
- その者が国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
- その者が外国の国籍を有し又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないこと
その他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと
住所の推定―国税庁
海外赴任の場合、基本的には非居住者として扱われます。
非居住者の場合、所得税の対象は国内源泉所得のみなので、海外駐在員となった場合には、給与は課税対象とはなりません。
一方、日本で不動産を所有しており、家賃収入がある場合など、日本国内において何かしらの所得が発生している場合は、国内源泉所得となりますので、所得税納税が必要となります。
この場合、日本円での給与であっても、赴任先での労働の対価として支払われるものなので、国内源泉所得とはみなされず、課税対象とはなりません。
住民税
海外赴任に伴って住民票を抜いた(海外転出届けを提出した)場合、住民税は発生しません。
海外赴任に際しては住民票を抜くことが推奨されていますが、国民健康保険に加入し続けたい場合には、住民票を残しておく必要があります。
ただ、多くの場合、赴任先の保険や海外旅行保険に加入すると思いますので、基本的には住民票は抜いておくとよいでしょう。
なお、住民税は、その年の1月1日に日本国内に住所を有する人に課税されます。
そのため、海外赴任が終わり、日本に帰国して住民票を入れる日が1月2日以降であれば、その年は住民税が発生しません。
健康保険
加入している健康保険が、国民健康保険であれば、住民票を抜いてしまった場合、加入継続はできません。
日本で長期の海外旅行保険に加入するか、現地の保険に加入する必要があります。
勤務先が所属する健康保険組合の保険に加入している場合は、日本での給料が引き続き支払われるか否かによって異なります。
日本での給料が引き続き支払われる場合
健康保険に引続き加入することができます。
家族についても、扶養の要件(年収130万円以下など)を満たせば、海外に帯同する場合も、日本に残る場合も健康保険を継続することができます。
健康保険に引続き加入していれば、日本に一時帰国した際に病院にかかった場合でも、3割負担で治療が受けられます。
なお、海外での保険については、駐在という形で海外赴任する場合、所属する企業が海外旅行保険を付してくれるケースが一般的だと思います。
歯科治療や出産(自然分娩)など、一部対象外の治療もあります。
歯科治療に備えたい方は、別途現地での保険に加入する必要があります。
日本での給料が支払われなくなる場合
移籍出向などで、現地での給与支払いのみとなり、日本での給料が支払われなくなる場合には、健康保険に引続き加入することは原則できなくなります。
従って、現地での保険加入や、長期の海外旅行保険加入を検討することとなります。
家族については、海外に帯同する場合は、本人同様、現地での保険加入や日本での長期の海外旅行保険加入を検討する必要があります。
一方、日本に残る場合は、国民健康保険への加入か、勤め先で健康保険に加入をする必要があります。
扶養について
税法上の扶養、社会保険上の扶養に分けて説明します。
それぞれの扶養についての詳しい解説は、【扶養の種類】扶養制度と年収の壁について【103万/ 106万/ 130万の壁】をごらんください。
税法上の扶養
税法上の扶養は、所得税と住民税に関わるものです。
国内源泉所得がなくなる場合には、日本国内で所得税を納める必要がないので、家族を税法上の扶養とすることは無意味となります。
もし、日本国内に税法上の扶養家族を残すのであれば、海外に赴任する本人ではなく、日本国内で所得税が発生しているほかの身内の方の被扶養者にするとよいと思います。
社会保険上の扶養
海外へ赴任する本人が、健康保険に継続して加入できるのであれば、被扶養者が海外に帯同する場合であっても、日本に残る場合であっても、扶養の要件を満たすことで社会保険上の扶養を継続することができます。
年金について
住民票を抜いて日本に住所がない場合、国民年金への加入義務はありません。
しかし、出国期間中に国民年金保険料を支払わなければ、将来受給できる年金は減額されます。
減額されたくない場合は、任意加入被保険者として加入を継続することで、国民年金の保険料を納め続けることができます。
ただし、日本での給料が引き続き支払われる方は、健康保険が継続するのと同様、厚生年金保険料の支払い・加入が継続されるため、個別で国民年金に任意加入する必要はありません。
なお、厚生年金保険料計算のもととなる標準報酬月額は、一般に、日本で支払われる給料と現地で支払われる給料を合計した金額がベースとなります。
まとめ
海外駐在に伴って疑問となりやすい、税金と健康保険、扶養、そして年金について解説してきました。
駐在員として海外に赴任する際には、これら諸々の制度を理解しておくと、すっきりすると思うので、ぜひ参考にしてみてください!
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