【海外駐在者必見】帰国後に確定申告が必要となる所得について

どうもTatsuoです。

海外駐在中に海外口座で投資を始めたという方や、日本に帰国後も海外の銀行口座をそのままにしておく、という方は多いのではないでしょうか。

しかし、日本に帰国した後に海外口座で受取る利子や配当は、日本の所得税・住民税の課税対象なので確定申告(もしくは住民税の申告)が必要となります。

本記事では、海外の銀行口座を保有している人や、これから海外で投資を始める人、すでに帰国された人向けに、確定申告が必要となる所得の種類と、所得税率などについて解説します。

Tatsuo

うっかりしていると脱税になりかねないので、気をつけましょう!

確定申告が必要となる人について

そもそも、確定申告の対象となる人については、以下のように定められています。

給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人は、原則として確定申告をしなければなりません。

  1. 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  2. 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
  3. 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
国税庁

ここでいう給与所得および退職所得以外の所得には、海外口座の利子や上場株式等の配当、譲渡所得、為替差益が含まれます。

海外でがっつりと投資を行っていると、年間の配当所得だけでも20万円を超えてしまうことがほとんどだと思いますので、大抵の場合、確定申告をする必要がでてきます。

住民税の申告について

例えば海外の銀行口座の利子所得を得ているだけで、給与所得以外の収入が年間20万円を超えない、といった場合には、所得税等の確定申告書の提出義務はありません。

ところが、その場合は、原則として市区町村へ住民税の申告書を提出する必要があります。

住民税の場合は、1円でも所得があれば申告の義務が発生しますので、注意しましょう。

確定申告が必要となる所得について

海外の銀行口座を保有したり、株の売買を行っている場合、以下の所得が確定申告の対象となります。

  1. 海外の銀行口座に付与される預金金利
  2. 海外の証券口座で受け取った上場株式等の配当・分配金
  3. 海外の証券口座で受け取った公社債等の利子
  4. 海外の証券口座で行った株式等の売却益
  5. 海外駐在中に受け取った金利等で、日本帰国後に日本円で受取り、為替差益が生じた場合
海外口座に関する確定申告のポイントは、
金利や配当金・売却益を受取った日と売買の約定日もしくは受渡日の為替をしっかり記録することです。
これが非常に重要かつ、最も手間のかかる作業になります。

所得の種類ごとに、課税方式などを以下の表にまとめました。

所得 種類 課税方式 損益通算可否 所得税率 住民税率 為替レート
海外口座預金金利 利子所得 総合課税 不可(そもそも損がないので) 5.105%~45.945% 5.0% 利子所得を収入すべき日のTTB
海外口座上場株式等の配当・分配金 配当所得 総合課税or申告分離課税 国内口座の譲渡損益とのみ損益通算可能
(海外口座の譲渡損失とは損益通算できない)
総合課税ならば5.105%~45.945%
申告分離課税ならば15.315%
5.0% 配当所得を収入すべき日のTTB
海外口座公社債等の利子 利子所得 総合課税or申告分離課税 国内口座の譲渡損益とのみ損益通算可能
(海外口座の譲渡損失とは損益通算できない)
総合課税ならば5.105%~45.945%
申告分離課税ならば15.315%
5.0% 配当所得を収入すべき日のTTB
株式等の売却益 譲渡所得 総合課税or申告分離課税 国内口座の譲渡損益とのみ損益通算可能
国内・海外口座の利子・配当所得とは損益通算できない
総合課税ならば5.105%~45.945%
申告分離課税ならば15.315%
5.0% 取得費用:約定日もしくは受渡日のTTS
譲渡費用:約定日もしくは受渡日のTTS
譲渡価格:約定日もしくは受渡日のTTB
利子所得等の為替差益 雑所得 総合課税 他の所得との損益通算不可 5.105%~45.945%。 5.0% 現地通貨で受け取った日のTTBと、
日本円にした日のTTB

なお、総合課税というのは、給与所得などの所得とまとめて課税する方式のことで、課税所得に応じて、所得税率が5.105%~45.945%の間で変動します。

一方、住民税率は、一律5.0%です。

為替レートについて

為替レートには、TTS, TTB, TTMの3つのレートが存在します。

  • TTB:銀行が外貨を購入するときの為替レート
  • TTS:銀行が外貨を売るときの為替レート
  • TTM:TTBとTTSを平均した為替レート

為替の計算においては、基本的にはTTMを使用することとなっていますが、継続適用を条件に、TTB、TTSを使用可能とされています。

なお、取引銀行の為替レートを使用することが原則となっています。

Tatsuo

私の場合は、取引銀行(DBS銀行)が過去の為替レートを開示していないため、三菱UFJ銀行の為替を使用しています。

参考:国税庁:外貨建取引に係る会計処理等

1.海外の銀行口座に付与される預金金利

海外の銀行口座に付与される預金金利は、利子所得として総合課税の対象となります。

日本でも銀行口座には預金金利が振り込まれますが、実はあの金額は、15.315%の所得税と5.0%の住民税が控除された金額です。

日本の銀行口座の銀行預金金利は源泉分離課税といって、預金口座に付利される前に税金が控除されているため、確定申告が不要なので、受け取っても何もしなくて大丈夫。

ところが、海外の銀行口座については、所得税や住民税は自動的に控除されません。

そのため、自分で確定申告する必要があります

所得税・住民税率

総合課税の対象となるため、所得税率は5.105%~45.945%、住民税率は5.0%です。

使用する為替レート

使用する為替レートは、利子所得を受領した日のTTBです。

2.海外の証券口座で受け取った上場株式等の配当・分配金

海外の証券口座で受け取った上場株式等の配当・分配金は、配当所得として総合課税もしくは申告分離課税の対象となります。

海外の証券口座は、一般口座扱いとなり、確定申告が必要となります。

国内証券口座での上場株式等の配当・分配金の取扱と同様、総合課税と申告分離課税を選択することができます。

所得税率

申告分離課税を選択した場合、所得税率は15.315%となります。

一方、総合課税を選択した場合、課税所得に応じて税率が変わりますので、5.105%~45.945%です。

課税所得金額が330万円までの方は、総合課税を選択すると所得税率が5%~10%なので、申告分離課税対比で税率を抑えることができます。

住民税率

住民税は申告分離課税ならば5.0%です。

総合課税を選択した場合、住民税率は10%(外国株式の配当・分配金は配当控除の対象外のため)となります。

従って、申告分離課税を選択すべきでしょう。

使用する為替レート

使用する為替レートは、配当所得を受領した日のTTBでOKです。

3.海外の証券口座で受け取った公社債等の利子

海外の証券口座で受け取った公社債等の利子は、利子所得として総合課税もしくは申告分離課税の対象となります。

国債など公社債の利子は、銀行預金の利子と違い、総合課税か申告分離課税かを選択できます。

上場株式の配当と取扱は同じですので、税率、使用為替レートについては省略します。

4.海外の証券口座で行った株式等の売却益

海外の証券口座で株式や債券などを売却して利益が出た場合、それらの売却益は、譲渡所得として総合課税もしくは申告分離課税の対象となります。

税率については上場株式の配当と取扱は同じですので、省略します。

使用する為替レート

ここで重要になってくるのは、使用する為替レートです。

譲渡所得は以下の計算式で算出します。

譲渡所得(譲渡損益)= 譲渡価格 – 取得費用 – 譲渡費用
  • 購入時の取得費用の計算には、株式等を取得した約定日もしくは受渡日のTTSを使用します。
  • 売却時の譲渡費用の計算には、株式等を売却した約定日もしくは受渡日のTTSを使用します。
  • 売却時の譲渡価格の計算には、株式等を売却した約定日もしくは受渡日のTTBを使用します。
譲渡費用と譲渡価格の計算で使用する為替レートが違うという点に注意が必要です。

5. 海外駐在中に受け取った金利等で、日本帰国後に日本円で受取り、為替差益が生じた場合

海外駐在中に受け取った金利・配当・売却益等で、日本帰国後に日本円に変えて受け取り、為替差益が生じた場合、雑所得として総合課税の対象となります。

最も忘れられがち、かつ、計算が面倒なのがこの為替差益でしょう。

為替差益には、これまでに受け取った金利・配当・売却益等、全てが関係してきます。

例えば、シンガポールにいる間にSGD 100の配当を受領したとすると、その時点の為替がSGD 1 = JPY 80だった場合、円貨での配当所得は8,000円となります。

数年後、日本に帰国してから、もうシンガポールドルはいらないと思い、そのSGD 100を日本円に変えて送金したとします。

その際、仮に為替がSGD 1 = JPY 85となっていた場合、日本円で8,500円受取ることとなります。

すると、以前把握していた8,000円の配当所得よりも、500円多く受け取ることとなります。

この500円が為替差益として、雑所得として取り扱われます

つまり、日本に帰国後に生じた利子や配当だけでなく、海外にいる間に生じたすべての利子や配当について為替を把握しておく必要があるのです。

為替差益計算の手間を省くには?

海外にいる間に生じたすべての利子や配当について為替を把握しておくことが一番ではありますが、どうしても為替差損益の計算の手間を省きたい、という人もいるでしょう。

少しでも為替差損益の計算を省くために、取り得る対策は以下の3つです。

  1. 日本に帰国する直前に、これまでに受け取ってた利子・配当所得と譲渡所得は全て日本円に変える
  2. 日本に帰国後に発生した利子・配当所得と譲渡所得は、その日に日本円に替えるor外貨建てMMFを購入する
  3. 円高の時に日本円に変えてしまい、為替損失とする

1.については、日本の非居住者である間に、外貨をすべて日本円にすることで、確定申告そのものから免れる方法です。

最も容易ですが、長期で株を保有したい場合や、帰国後も銀行口座をキープして利子所得を得たい場合にはそぐわないですね。

2.については、利子所得等をその日のうちに日本円に替えれば、為替差が出ないことになりますので、為替差損益の計算をしなくて済むということです。

同じ理由で、利子所得等を得た同日中に外貨建てMMFを購入すれば、為替差については考慮しないで良く、その後に外貨建てMMFを売却した場合の譲渡所得を考えるだけで済みます。

3.は、為替差損になれば確定申告に含めなくて済む、という話です。最終手段ですね…。

Tatsuo

いろいろ述べましたが、結局のところ、為替差損益の計算は必要なものと割り切って、外貨の平均取得為替レートを記録しておき、日本円に変えるたびに為替差損益を認識する、というのがベストだと思います。

まとめ

長くなってしまいましたが、海外で発生した所得を日本で確定申告する際のポイントについてまとめました。

帰国して、確定申告をする段になって焦らないよう、所得が発生した際には為替をきちんと把握しておきましょう!